[ウスリスク2024訪問団] 15.安重根記念碑(3) 15個の石ころ

安重根義士斷指同盟記念碑公園には説明碑と記念碑のほか、15個の石ころが配列されています。 横3行縦5列に並べられたこの15個の石ころは、安重根義士が明らかにした伊藤博文殺害の理由を指すそうです。 伊藤博文の罪状は次の通りです。

 

 

1.明成皇后を殺害した罪; 2.高宗皇帝を廃位した罪; 3.乙巳5条約と丁未7条約を強要した罪; 4.無罪の韓国人を虐殺した罪; 5.政権を強奪した罪; 6.鉄道、鉱山、山林、川沢を強奪した罪; 7.日帝紙幣の使用を強要した罪; 8.軍隊を解散した罪; 9.教育の妨害された罪; 10.韓国人の外国留学を禁じた罪; 11.教科書を押収して燃やした罪; 12.韓国人が日本人の保護を受けようと世界に嘘を広めた罪; 13.韓国と日本の間で争闘が続いており、殺戮が絶えないが、太平無事であるかのように天皇をだました罪; 14.東洋平和を破った罪; 15.日本の天皇の父·光明天皇を殺した罪。

 

 

安重根義士斷指同盟記念碑公園にこのような石ころを並べたのは良いアイデアです。 伊藤博文が殺されて当然の理由を説明する機会を与えるからです。 これらの石ころを見ると、伊藤博文の罪状が「十五種類もあったのか？」という驚きとともに、インターネットを探させてくれるからです。

 

伊藤の罪状は、安重根義士が1909年10月26日に伊藤を砲殺して逮捕された後、ハルビンの日本総領事館で関東都督府溝淵孝雄の尋問を受けた際に明らかにしたものだそうです。 この目録は韓國の国史編纂委員会の『韓国独立運動史資料集』第6巻3-4頁に収録されていますが、おそらく安重根審問調書を直接参考にしたか、朝鮮史編修会の『朝鮮史』に収録されているものでしょう。

 

 

ところが当時、世界各国の新聞も伊藤博文暗殺を報じ、砲殺理由15点も記事にしました。 シンガポールの英文新聞「ストレーツ·タイムズ(The Straits Times)」は1909年12月2日5面に掲載した「ハルビンの悲劇(The Harbin Tragedy)」というタイトルの記事で「最近死亡した伊藤伯爵の狙撃者に対する予備審問」が11月16日に終わり、まもなく「非公開裁判に回付」されるとし、狙撃者が予備審問で明らかにした「伊藤を殺した15の理由」を次のように報道しました。

 

 

「1.明成皇后を殺害した罪; 2.1905年11月に韓国を日本の保護国にした罪; 3.1907年に丁未7条約を強制的に締結した罪; 4.高宗皇帝を廃位した罪; 5.軍隊を解散した罪; 6.罪のない人々を虐殺した罪; 7.韓国人の権利を剥奪した罪; 8.韓国の教科書を燃やした犯罪; 9.韓国人を新聞に寄与させなかった罪; 10.日本の紙幣を強制的に使用した罪; 11.韓国が300万ポンドの借金を負わせた罪; 12.東洋の平和を破った罪; 13.韓国に対する日本の保護政策を糊塗した罪; 14.日本の天皇の父、光明天皇を殺した罪; 15.日本と世界をだました罪」

 

 

ロシアの沿海州の新聞「遠い辺境(Далекая окраина)」に掲載された伊藤博文の罪状目録も「ストレーツタイムズ」の目録と同じです。 ところが、国史編纂委員会の資料集の目録と当時の外信の目録には違いがあります。 順番も違うし、内容も少し違います。

 

外信の目録には韓国に知られた目録の中で「5.政権を強奪した罪」、「6.鉄道、鉱山、山林、川沢を強奪した罪」、「9.教育を妨害した罪」、「10.韓国人の外国留学を禁止した罪」、「13.韓国と日本の間に争闘が続き殺戮が絶えないのに太平無事であるように天皇をだました罪」などが抜けており、「7.韓国人の権利を剥奪した罪」、「9.韓国人を新聞に寄与できないようにした罪」、「11.韓国に300万ポンドの借金を負わせた罪」、「15.日本と世界をだました罪」が含まれました。

 

 

史料は(1)多いほど、(2)現場と事件に近いほど、(3)客観的であるほど価値が高いです。 日帝の審問調書や、日帝朝鮮史編修会議の資料よりは外信報道の方が価値のある史料でしょう。

 

安重根義士の斷指同盟と伊藤博文の砲殺が100年以上前のことで、クラスキーノ記念碑公園に15個の石ころが配置されてから10年以上が経ちました。 ところが、この15個の石ころが指すところが何なのか確定していないというのは不幸なことです。

 

 

韓国の歴史学、特に近代史研究はまだまだ先が長いようです。 (jc, 2024/5/15)